旅路で見たもの 後編。
どうにもならない地方の現実。
山梨県と長野県の県境、国道20号沿いで見た数々の空き家、空き店舗跡、ドライブイン跡…。
あれは典型的な「ストロー現象(効果)」の結果。いやいや、素直に言葉を濁す事なく正直に述べるのならば“惨状”だった…。
ストロー現象?何だそれ?
これは本州と四国を結んでいる「瀬戸大橋」が開通する(ちなみに瀬戸大橋の開通は昭和63年(1988年)4月10日)」よりもずっと前の計画段階にて、当時の四国通産局総務部長の小野五郎氏が発した言葉なのだが、まず簡単に言うと、それまでの主要交通路に代わる新たな交通路(高速道路や新幹線等々が最たるものだ)が開通する事により、その新旧交通路に関連する都市や地域が衰退化したり繁栄化する現象や効果を表している(ちなみに、只今当記事にて取り上げている当該地での“それまでの主要交通路”とは「国道20号旧甲州街道」であり、また“新しい主要交通路”とは「中央高速道路」があてはまる)
「ストロー現象(効果)」について詳しい事を知りたい方は【こちらへ】
この「ストロー現象」は地方ではそう物珍しいものではない。私が住む地元でも、それまで街のド真ん中を通っていた主要交通路(国道)が、街の外苑を廻るバイパス化された事で“旧道化”した事で、交通量(人通り)が激減した結果、それまで国道通り沿いに並んでいた各商店が集客を見込めなくなって、一気に店を閉めて商店等が空き家だらけになってしまったのを間近で見ているし、長野県内その他の地域でも、同じような現象は散々見て来た。
いまいち「ストロー現象」についてピンと来ない方に平たく(しつこく)説明をすると、A都市(地域)とZ都市(地域)を結ぶ交通路があるとする(当然、その間にはB~Yの各都市地域が存在し、つまりは経由地点であった)
例えばトラックドライバーだ。
そろそろ昼飯時だな…、と、各経由地にてドライブインへ寄っていた。観光客だってそうだ。
ファミリードライバーのパパだったら子供がぐずるからジュースでも買うか。せっかくだからついでにお土産でも買うか…。
等々の大小問わず様々な経済活動が行われていた(もっと分かりやすい言葉で表現するならば「皆が各地域にてお金を落としていた」)所に、A~Z間を直接結ぶ新しい交通路(例えば高速道路)が開通すれば、さてトラックドライバーや観光客、ファミリードライバーのパパさんたちは、旧交通路or新交通路のどちらを選ぶのだろうか?と、問われれば、それは後者の新交通路になるだろう。何しろ便利だから(出発地がAでも目的地がZとは限らない。目的地がDなりXかも知れないが、どちらにせよその間にある経由地。地域はスっ飛ばされるし、つまりは誰も寄らなくなる)
そうともなれば、元々資本力がある商店(県内または全国店規模の企業等)は、さっさと店を閉めて、もっと集客力が見込める地域や、それこそ新交通路沿いへ移転するし(それまで大きな通り沿いにて当たり前のように営業していた大きい店。スーパーやホームセンターやコンビニが、ある日突然閉店するのはそのシグナルの一つであり、しばらくすると、ちゃっかり新主要交通路のバイパス沿いに移転している事が多々ある)逆に資本力がない個人規模の商店では「もうこれではどうにもならん…。店を閉めようか…」と、あちこちでの溜め息の繰り返しの結果、その地域の(県や市町村。またはその地区等々“スケール”は様々だが)の経済活動が低下して、最後には(無論、その“最後”に至るまでには相当な段階や各事情があるのだが、語り出すと切りがないのでやめておく)
「何だか昔と違って住みにくい不便な地域になっちゃったね…」
となって、人口が減って衰退化する。
例示したこれはあくまでも一例なのだが、これが「ストロー現象」であり、またそれが「過疎化」の一因であり、そしてこれが“地方の現実”でもある…。
この現象そのものについては、私なりに注視注目をしていたのだが、この長旅にて、長野県富士見町から同県茅野市に入ってから目の当たりにしたそれは、あまりにも大規模かつ長区間であり、はっきり言えば、あそこまで“酷い惨状”は、正直初めて見た(ちなみに、この現象自体に「ストロー現象・効果」と言う“名前”があるのを知ったのは割と最近の事だ)
私が車のハンドルを握りながら、思わず吐露した。
「うわぁ…」
とは、それなのだ。トラウマとまでは言わないが、正直ドン引きだった。
前回にて述べたが、長野県→静岡県→山梨県(車中泊)→長野県の長旅の終盤戦でこれ…。仕上げも仕上げの段階で“冷や水ビシャッ!”であった…。
まあ私自身、何とも楽しい長旅の終盤戦に入った事で、どこか心が浮かれていたのだろうが、それにしても…、である。
いやはや何とも…。旅路には何が待ち構えているのかは分からないから怖いし、またそれがあるから旅は楽しいのだと思う…。
おわり。
「って、おい!ちょっと!そういう締め括りで終わりなのかよ!」
と、思われる方々もいるだろう…、が、この問題については、もはや私程度がこれ以上あれこれ誰かに問うて語った所で、何かしらが解決する訳ではないと思っているし、自覚もしている。
冒頭に冠した「どうにもならない地方の現実」とは、この事だ(ただ注意したいのは「どうにもならない事」と「どうでもいい事」は違う)
唯一、私が言える事は(あくまでも私個人の私見なのだが)この「ストロー現象」なるもの自体は、何も土木技術が成熟していた昭和の末期に開通した「瀬戸大橋」がどうのこうの云々以前。
大正、明治どころか、それはそれは長く続いた江戸藩政期より前からもあったであろう「新道開鑿」によって、峠の茶屋の廃止やら地域、村そのものが消えた。そしてまたは新しく出来た。を何百年もの間でも、ずっと繰り返して来た事だと思う。
“現在”の国道20号沿い(甲州街道)で私が見た風景は“歴史”からすればほんの一瞬の断片の欠片にも過ぎないのだろう。
おわ…。ん?待て待て…。何だか似たような事を書いたような気がするな…。
【関連記事】
これで本当におわりです。
山梨県と長野県の県境、国道20号沿いで見た数々の空き家、空き店舗跡、ドライブイン跡…。
あれは典型的な「ストロー現象(効果)」の結果。いやいや、素直に言葉を濁す事なく正直に述べるのならば“惨状”だった…。
ストロー現象?何だそれ?
これは本州と四国を結んでいる「瀬戸大橋」が開通する(ちなみに瀬戸大橋の開通は昭和63年(1988年)4月10日)」よりもずっと前の計画段階にて、当時の四国通産局総務部長の小野五郎氏が発した言葉なのだが、まず簡単に言うと、それまでの主要交通路に代わる新たな交通路(高速道路や新幹線等々が最たるものだ)が開通する事により、その新旧交通路に関連する都市や地域が衰退化したり繁栄化する現象や効果を表している(ちなみに、只今当記事にて取り上げている当該地での“それまでの主要交通路”とは「国道20号旧甲州街道」であり、また“新しい主要交通路”とは「中央高速道路」があてはまる)
「ストロー現象(効果)」について詳しい事を知りたい方は【こちらへ】
この「ストロー現象」は地方ではそう物珍しいものではない。私が住む地元でも、それまで街のド真ん中を通っていた主要交通路(国道)が、街の外苑を廻るバイパス化された事で“旧道化”した事で、交通量(人通り)が激減した結果、それまで国道通り沿いに並んでいた各商店が集客を見込めなくなって、一気に店を閉めて商店等が空き家だらけになってしまったのを間近で見ているし、長野県内その他の地域でも、同じような現象は散々見て来た。
いまいち「ストロー現象」についてピンと来ない方に平たく(しつこく)説明をすると、A都市(地域)とZ都市(地域)を結ぶ交通路があるとする(当然、その間にはB~Yの各都市地域が存在し、つまりは経由地点であった)
例えばトラックドライバーだ。
そろそろ昼飯時だな…、と、各経由地にてドライブインへ寄っていた。観光客だってそうだ。
ファミリードライバーのパパだったら子供がぐずるからジュースでも買うか。せっかくだからついでにお土産でも買うか…。
等々の大小問わず様々な経済活動が行われていた(もっと分かりやすい言葉で表現するならば「皆が各地域にてお金を落としていた」)所に、A~Z間を直接結ぶ新しい交通路(例えば高速道路)が開通すれば、さてトラックドライバーや観光客、ファミリードライバーのパパさんたちは、旧交通路or新交通路のどちらを選ぶのだろうか?と、問われれば、それは後者の新交通路になるだろう。何しろ便利だから(出発地がAでも目的地がZとは限らない。目的地がDなりXかも知れないが、どちらにせよその間にある経由地。地域はスっ飛ばされるし、つまりは誰も寄らなくなる)
そうともなれば、元々資本力がある商店(県内または全国店規模の企業等)は、さっさと店を閉めて、もっと集客力が見込める地域や、それこそ新交通路沿いへ移転するし(それまで大きな通り沿いにて当たり前のように営業していた大きい店。スーパーやホームセンターやコンビニが、ある日突然閉店するのはそのシグナルの一つであり、しばらくすると、ちゃっかり新主要交通路のバイパス沿いに移転している事が多々ある)逆に資本力がない個人規模の商店では「もうこれではどうにもならん…。店を閉めようか…」と、あちこちでの溜め息の繰り返しの結果、その地域の(県や市町村。またはその地区等々“スケール”は様々だが)の経済活動が低下して、最後には(無論、その“最後”に至るまでには相当な段階や各事情があるのだが、語り出すと切りがないのでやめておく)
「何だか昔と違って住みにくい不便な地域になっちゃったね…」
となって、人口が減って衰退化する。
例示したこれはあくまでも一例なのだが、これが「ストロー現象」であり、またそれが「過疎化」の一因であり、そしてこれが“地方の現実”でもある…。
この現象そのものについては、私なりに注視注目をしていたのだが、この長旅にて、長野県富士見町から同県茅野市に入ってから目の当たりにしたそれは、あまりにも大規模かつ長区間であり、はっきり言えば、あそこまで“酷い惨状”は、正直初めて見た(ちなみに、この現象自体に「ストロー現象・効果」と言う“名前”があるのを知ったのは割と最近の事だ)
私が車のハンドルを握りながら、思わず吐露した。
「うわぁ…」
とは、それなのだ。トラウマとまでは言わないが、正直ドン引きだった。
前回にて述べたが、長野県→静岡県→山梨県(車中泊)→長野県の長旅の終盤戦でこれ…。仕上げも仕上げの段階で“冷や水ビシャッ!”であった…。
まあ私自身、何とも楽しい長旅の終盤戦に入った事で、どこか心が浮かれていたのだろうが、それにしても…、である。
いやはや何とも…。旅路には何が待ち構えているのかは分からないから怖いし、またそれがあるから旅は楽しいのだと思う…。
おわり。
「って、おい!ちょっと!そういう締め括りで終わりなのかよ!」
と、思われる方々もいるだろう…、が、この問題については、もはや私程度がこれ以上あれこれ誰かに問うて語った所で、何かしらが解決する訳ではないと思っているし、自覚もしている。
冒頭に冠した「どうにもならない地方の現実」とは、この事だ(ただ注意したいのは「どうにもならない事」と「どうでもいい事」は違う)
唯一、私が言える事は(あくまでも私個人の私見なのだが)この「ストロー現象」なるもの自体は、何も土木技術が成熟していた昭和の末期に開通した「瀬戸大橋」がどうのこうの云々以前。
大正、明治どころか、それはそれは長く続いた江戸藩政期より前からもあったであろう「新道開鑿」によって、峠の茶屋の廃止やら地域、村そのものが消えた。そしてまたは新しく出来た。を何百年もの間でも、ずっと繰り返して来た事だと思う。
“現在”の国道20号沿い(甲州街道)で私が見た風景は“歴史”からすればほんの一瞬の断片の欠片にも過ぎないのだろう。
おわ…。ん?待て待て…。何だか似たような事を書いたような気がするな…。
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これで本当におわりです。